400年の伝統と歴史を持つ小代焼は熊本が誇る国指定の伝統的工芸品であり、熊本県北部の荒尾地区には12の窯元がある。
「伝統を守るというよりも先代たちが追及した美を追い求めたいのです」と話すのは小代焼ふもと窯二代目井上尚之さん、34歳。
小代焼ふもと窯は先代井上奉秋氏が35年前に開いた窯元である。
井上尚之さんは専門学校を卒業後、福岡県の小石原焼、太田哲三師のもとに弟子入りを決意。
弟子入り後「焼き物は熊本に帰って作れば良い」と言われ左官、大工、造園や窯突き等の手伝いをさせられた。
初めは、師の意図もくみ取れず、ようやく焼き物を作り出し始めた時、この手伝いの意味を理解することができた。
生活の中で感じる美は、どんな仕事も同じ、焼き物を作り出してからでは中々見出すことができないことを体験させてもらったことに深く感謝したそうだ。
最後に将来の夢を聞くと意外な答えが返ってきた。
「嫁や家族が幸せであればそれだけで十分です。僕たちが作るものは生活と一体化するもの。家族が幸せであれば、良い作品も作れるし、良い作品を作れば皆様に評価もされる。評価されれば展示会や賞などの話も自然と来るはずですから」と井上さん。
なるほど良い生活があるからこそ良い作品を作ることができる。
取材が終わった後、最も気に入った小代焼を家族へのプレゼントとした。